ギャラリー エー クワッドで開催されている「点字にふれる」という展示会に行って来ました。
入口を入るとすぐ壁面に広がる、全盲の美術家・光島貴之さんの作品「エークワッドから広がるそよぐ まちの風」。
解説には「まちで感じた音やにおい、風や感触、体験などが手ざわりによって表現されています」とあります。
展示物には触って良いので私も触ってみました。正直に言えば、目をつむって触ってみても作品としては感じられず、木材や釘、紙などの素材として感じてしまいました。見えている私はどれだけ目に頼っているのだろう、と思います。
作品の中にはところどころ点字も使われていますが、もちろん私には読めません。
興味深かったのは「てんじつきさわるえほん」。
子どもに「絵本読んで」と言われた視覚障がいのあるお母さんが、見えなくても子どもと一緒に楽しめるように、と制作された絵本です。
この絵本はボランティアの方によって点訳されるそうですが、印刷方法や製本方法、さらには配送にも工夫が凝らされていて、一般書籍の制作をする身としてはその工程や手間が具体的に想像されました。
その結果出来上がった絵本は、見えないお父さん・お母さんがお子さんに読み聞かせができる、子どもは親と一緒に一つの絵本を楽しめる、という大きな喜びに繋がっていくのでしょう。
これは音声コードではできないこと。音声で絵本の内容自体は読み上げることはできても、お父さん・お母さんの肉声で読んでもらうのとはまったく違います。
身近なものについている点字が紹介されているコーナーもあります。
缶ビールには「おさけ」、ジャムの瓶には「ジャム」とついているそうです(読めないけど)。
ふりかけの「ゆかり」の袋にもついていて、点字の表を見ながら触ってみたら、確かに「ゆ」「か」「り」と読めました。
点字そのものではないけれど、シャンプーやボディーソープには、区別できるようにそれぞれ別のきざみがついています。これを知っていれば、洗髪中に目をつむったままでもシャンプーかコンディショナーか、区別できますね。
こういうものも音声コードでは対応できないものだと思います。
他にも先に紹介した美術家の光島貴之さんや写真家の白鳥建二さんの活動ビデオ、見えにくい人の見え方を体験する眼鏡、点字の書き方など、興味深い展示の数々でした。
来場者はさほど多くはなかったものの、途切れることなく来場者はありました。かなり分厚いレンズの眼鏡をかけたお子さんと親御さんもいらしていて、お子さんは点字を読んでいました。学校で習っているのかもしれません。
帰りがけには受付で販売していたパンフレットを購入。実際の点字で書かれているわけではなく、普通の印刷でした。
これには音声コードがついていたらいいんじゃないかなぁ、と思いました。だって、先ほどのお子さんのように見えにくい方が手に取るかもしれないじゃないですか。展示会の内容からすれば点字がいいのでしょうけれど、点字の識字率は高くないことを考えれば、音声コードが現実的だと思います。
点字に触れてみて、点字は点字として必要なシーンがあることがわかりました。点字絵本は「読み聞かせ」ができて、お子さんとのコミュニケーションとしても大切なものだと実感しました。
一方で、やはり音声コードが有効なシーンもあると思いました。デバイスの音声ではありますが、コストを抑えつつ情報を伝えることができます。
いろいろなツールの良さや得意なことを知り、当社の提供するユニバーサルデザインの質を高めていきたいと思います。
『社会のダイバーシティを考える 6つの点から広がる世界 点字にふれる 』
会期:2024.7.26㊎〜2024.10.24㊍
場所:ギャラリーエークワッド(東京都江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1F)