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さようなら、CRTモニタ

 

長い間、仕事場の隅にひっそりと置かれていた大きなCRTモニタを、ついに処分しました。
AppleのPower Mac G4と一緒に使っていたもので、今見ると「これ、テレビ?」と思うような大きさと重さ。実際、重さは30kg近くあります。

 

 

30年ほど前、グラフィックデザインの現場ではこのCRTモニタが欠かせませんでした。

細かな色味のチェックやレイアウト確認は、すべてこの画面越し。今のように薄くて軽い液晶モニタとは比べものにならないほどの存在感と、ある意味“安心感”がありました。

 

私がこの仕事に入ったころには、すでにMacを使ったDTP(デスクトップパブリッシング)が当たり前になっていましたが、先代社長である父の時代は、まったく違っていました。レイアウトは方眼の台紙に手描きで文字や写真の位置を指定し、写植、版下、製版と、印刷物が完成するまでには多くの人の手と時間が必要だったのです。

 

そこにMacが登場したことは、まさに「革命」だったそうです。
IllustratorやQuarkXPressのようなソフトでデザインが画面上で完結する。修正もすぐにできる。何より、試行錯誤が自由になった――父や父の時代のデザイナーさんたちはそんな風に言っていました。

とはいえ最近ではCRTモニタを使うこともなくなりました。
ただ、昔からお付き合いのあるクライアントさんから「20年史のデータを40年史に使いたいんだけど…」といったご相談が今も時折あります。古いMacintoshはまだ動くので、そうしたリクエストに応えるには古い環境を維持しておく必要があります。DTPソフトのバージョンが変わるとレイアウトが崩れることもあるため、当時のソフトで開くのが一番確実です。

 

そんな事情もあり、これまではCRTモニタを3台所持していましたが、保管スペースの問題や、年々高くなる処分費用を考えて、思い切って2台を手放すことにしました。

 

残した1台は、現在ご依頼を受けている「50年史」の制作にきっと必要になるはずです。
その時にはPower Mac G4とともに、再び静かに活躍してくれると思います。