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デザインは遍く潜む?!  空間デザイン

 

先日、東京国立博物館で開催されている特別展『京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ』を観てまいりました。日頃、仏教にも仏像にもあまり興味のない不信心者なのですが、今回の展示は鎌倉期の彫刻の中でも名品と名高い(もちろんこれも受け売りです)「釈迦如来坐像」「十大弟子立像」「六観音菩薩像」が全方位360°から観ることができると聞いてミーハー心が刺激されてしまいました。 実際、これほど近くで観られるとは。しかも周回360°。ここまで近くで、しかも360°ぐるっと観た人は歴史上何人いることか。十大弟子立像などは一通り観た後に背中の表情だけ見比べてしまいました。

会期後半に入った現在では「六観音菩薩像」の光背が取り外された状態で展示されています。更にレアな後ろ姿が拝見できます。とはいえ今回一番の衝撃を受けたのは、展示会場の照明! 
博物館、美術館での展示には、どのように作品を並べ、どのように観せるかという配置や照明の空間デザインをする専門家がいらっしゃるそうです。いわれてみれば当たり前のことなのかもしれませんが、今まで全く考えたことがありませんでした。今回の特別展は池田英雄さんという方が担当されていて、博物館展示の空間デザイン、会場造形、展示のアイデア、グラフィックについてラジオで話されていたのを聴いていたので、自ずと関心はそちらの方へ。中でもぜひそれを確認したいと思っていたのが照明でした。 

短冊状の光って、想像することができますか。360°どこからでもライトの光で眩しく感じることなく鑑賞することができるためには、照明を当てた対象の後ろまで余分な光が飛んでいかないように、幾つものライトで光を細かく切りながら仏像を照らしているのが、短冊状の光だそうなのですが…。
すごい!としか言いようがありませんでした。 確かにどこから観ても眩しくて観づらいということがありません。木彫の照明は元々それほど強くできないので、くっきりはっきりというわけではありませんが、どの位置からでもじっくり鑑賞することができました。 どれだけのライトで構成されているのか、もちろん全てを数え上げることはできませんでしたが、この空間全体を把握した構成力に感動しました。 
『京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ』の会期は12月9日までです。興味を持たれた方は、足を運んでみられてはいかがでしょうか。

 

▲撮影可能だった「聖観音菩薩立像」